静脈と動脈として午後四時の『ネフスキイ』から垂れてくる紐
今日、京都で開催される「後期・岡井隆を語る会」(神楽岡歌会主催)のために、この夏は岡井さんの2000年以降の歌集16冊を読みこんできた。そのなかでも名高い『ネフスキイ』には、赤と青、2本の栞紐がついている。私の『ネフスキイ』は古本なので、もともとそうだったのか色褪せたのかわからないけれど、赤は真っ赤というよりも朱色に近い。一首一首に、なまなましく血管がめぐっている感じがする。
作者/大森静佳(おおもりしずか)
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1989年、岡山県生まれ。「京大短歌」を経て「塔」短歌会編集委員。2010年に第56回角川短歌賞を受賞。歌集に『てのひらを燃やす』、『カミーユ』、『ヘクタール』がある。京都市在住。
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