No.262/2024年9月18日【月】 星よりも月、月よりも闇愛し、酒飲むやうに闇呑みし人

伊藤一彦

昨日は日向市東郷町の坪谷で牧水祭だった。歌碑に献酒するなどのセレモニーが終わった後は、吉川宏志さんと牧水について対談をした。なお、あまり知られていないかも知れないが、彼は東郷町の出身である。今年、『雪の偶然』で迢空賞を受けた。作品も評論ももっとも注目している歌人である。大森静佳さんと吉川さんは同じ「塔」に所属している。大森さんも大いに注目している歌人である。彼女は今年「NHK短歌」の選者をしているが、選ばれる作品が新鮮で魅力がある。9月15日の放映もそうだった。愉しかった。牧水が大正二年に東郷町に帰郷していたときの歌に「われは酒のごとく闇を愛す、一切の解決と悲哀とを共に其処に彫(ゑ)らむとねがふ」がある。歌集未収録のこの一首、日ごろ愛誦している。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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