地震に台風にと、宮崎は災害の多い八月でした。
みなさま大事なかったでしょうか。
少し遅くなりましたが、八月の歌の振り返りです。どうぞ!
8月の歌のアーカイブはこちら↓
それぞれの心に残った8月の短歌
伊藤一彦・選
No.242/2024年8月29日【あつ】
古(いにしえ)の悲歌が聞こえるまだあつき素焼きの肌に耳をすませば (乃上あつこ)
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「素焼きの肌」に耳をすますという新鮮な感覚の表現が心に残った。肌に触れるなら当たり前だがあつこさんは古代の音楽を聴いている。それも「悲歌」というから、どんな土偶、埴輪だったのだろうか。きっと女性のそれである。第三句の「まだあつき」が表現のポイントだ。創られた当時の「あつさ」をそのまま甦らせているのである。そうでなければ「悲歌」は聞こえてこないだろう。時間を超越することは短歌の力業の一つである。
No.232/2024年8月19日【舌】
さてもさてもよい酒じゃあと呑み干して打ちたし萬斎の舌鼓を (久永草太)
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歌い出しの「さてもさても」から酔っぱらっている。そして、「のむ」は「飲む」でなく「呑む」。しかも「呑み干す」と。しかし、よくよく読めば「たし」という願望の歌だ。その切なさが歌の味わいどころだ。草太さんは近く歌集ができるそうだから、お祝いの会で「舌鼓」を打たせたい。
乃上あつこ・選
No.225/2024年8月12日【アユ】
アユヤナの簀の子に落ちし鮎の眼の天つ光を嵌(は)めてかなしも (伊藤一彦)
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大森さんの「アユタヤ」から「アユヤナ」を歌う発想がユニークで、くすっと笑ってしまいました。捕えられた鮎の表情にクローズアップしていて、「天つ光を嵌めて」という表現が素晴らしくて、Xでも反響が大きかったです。頭韻のアの母音が響いていてきれいですね。
No.235/2024年8月22日【パラソル】
砂浜のパラソルぜんぶ離陸してしまえ 結婚おめでとうだよ (久永草太)
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パラソルが一斉に空に飛び立つ景の鮮やかさと華やかさが圧巻でした。「結婚おめでとうだよ」というセリフによって、友人達が次々結婚していくことへの驚きと焦りがうまく表現されていて、短歌ネイティブさんらしい自在な言葉運びだと思いました。
久永草太・選
No.216/2024年8月3日【かは】
千年も万年もなき大河(おほかは)のみづ剃りあとのやうに青く輝(て)る (伊藤一彦)
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上句の、堂々たる大河の長い歴史までをも思わせる水の描写。その美しい川の景色を何にたとえたかと思えば、まさかの剃り痕! もうちょっときれいなものにたとえて欲しかったろうに、と大淀川に同情しなくもないですが、刺して来るような川面の照り返しがチクチクと想像されて、意外と言い得て妙なのかも、と思った歌でした。
No.221/2024年8月8日【酷・名】
つぎつぎと学名溶ける酷暑日の植物動物われら水飲む (乃上あつこ)
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学名が溶ける、という発想が面白い歌です。学名はイタリック(斜体)で書くという決まりになっているので、その姿がいかにも溶けかけているよう。そんな学名で繋がって、我ら、みんな水を飲まなければならない、という、夏を乗り越えんとする仲間意識が賑やかです。引き続き熱中症にご用心!
9月のおしらせ
おしらせ① 歌を回す順番
9月1日から、歌をリレーする順番が逆回転になります。
8月:伊藤←乃上←久永
9月:伊藤→乃上→久永
おしらせ② 従姉、続投(特別ゲスト)
いちごつみ一家の従姉、大森静佳さんに、九月も引き続きご参加いただいております!
作者/大森静佳(おおもりしずか)
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1989年、岡山県生まれ。「京大短歌」を経て「塔」短歌会編集委員。2010年に第56回角川短歌賞を受賞。歌集に『てのひらを燃やす』、『カミーユ』、『ヘクタール』がある。京都市在住。
毎週日曜日が特別ゲストの曜日になっております。大森さん、本当にどうやって歌を作っているのか、脳みそをのぞかせて欲しい……
おしらせ③ 9月の写真
月毎に変わっていくサムネイル画像。
9月はいちごのかき氷です。練乳がたっぷりかかっていておいしかったなあ。
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秋、だんだんいちごスイーツが減ってきて、頭を抱えています。来月はどうしよう……
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