尽くしくれし筑紫のをみな歌ひたる水城の旅人はるけしや、否
9月1日の太宰府市での「筑紫歌壇賞」の贈賞式に出席してきた。60歳以上の著者の第一歌集を顕彰するこの賞のコンセプトは私が考えた。大伴旅人、山上憶良がいわゆる「筑紫歌壇」を盛り上げたとき、彼らは60歳以上だったことに由る。第21回の今年の受賞者は本屋敏郎氏で、受賞歌集は『神話街道』。かつて大伴旅人が任地の大宰府を去るときに歌った「大夫(ますらを)と思へる我やみづくきの水城の上に涙拭(のご)はむ」(万葉集九六八)は有名だ。この歌については中西進編『大伴旅人』(祥伝社)でくわしく鑑賞を書いたことがある。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)
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1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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