いにしへもいまも肌ごころ鋭きは白秋 ビートしてゐる雲も
8月も明日まで。朱夏から白秋へ。まだまだ暑い毎日だが、だからこそ秋の歌を口ずさみたい。たとえば前川佐美雄の歌。「ゆふ風に萩むらの萩咲き出せばわがたましひの通りみち見ゆ」(『大和』)という魂の通り道が見える萩咲く秋の歌。いかにも大気が澄んでもの明らかに見える秋、アキラカの「アキ」が秋の語源という説があるほどだ。あつこさんの「素焼きの肌」から「古の悲歌が聞こえる」の一首からは、佐美雄の「出土せる土器たちまちに乾きたり千年前の雲雀鳴くこえ」(『松杉』)を想起した。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)
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1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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