パラソルの落とせる影の濃き宇宙ほんとのことは言わないでおく
パラソルは強い日差しを避けると同時に、その中だけの空間を形成する。二人のパラソルには二人だけの宇宙が広がり、そこでのことは二人にしかわからない。恋愛や結婚というのは、パラソルの影のようなものだと思う。牧水のかつての恋人小枝子は、結婚の話題を避けていた。牧水にも次のようなパラソルの歌がある。「少女子の青パラソルよりなほひろき麦藁帽を着て海に入る」。明日は牧水のお誕生日。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)
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1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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