じゃあまたね振る手のひらのしろじろと戻らぬ時間の隙間に伸びる
別れ際にいつも大きく手を振ってくれる人がいる。何度も何度も振り返って、笑顔で手を振る。その様子は明るいけれど、どんなに笑顔でも私は悲しくなってしまう。さよならとは、会って留めていた時間を元の不可逆な流れの中に戻すことなのかもしれない。時間は流れている。「じゃあまたね」で、流れをやめない時間はその正体を見せる。
作者/乃上あつこ(のがみあつこ)
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1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。
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