アユタヤの犬の瞳に映りこむ瓦礫のなかを遠く歩めり
今年の2月にタイの古都アユタヤを訪れた。頭部のない仏像の、なめらかな首の断面におもわず目が吸い寄せられる。ビルマ軍の侵攻によって荒廃した遺跡の敷地内を、疲れきった目つきの野良犬が何頭もうろうろしていた。現地で買ったラタン(籐)のコースターに麦茶のグラスを置いて、この夏は毎日ものを書いたり読んだりしている。
作者/大森静佳(おおもりしずか)
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1989年、岡山県生まれ。「京大短歌」を経て「塔」短歌会編集委員。2010年に第56回角川短歌賞を受賞。歌集に『てのひらを燃やす』、『カミーユ』、『ヘクタール』がある。京都市在住。
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