殴んなら殴れよただし混じり気のない君なりの言葉でこいよ
基本的に悪口というのは既存の言い回しが利用される。「馬鹿」だって字面は単に二種の動物だけれど、みんなでその悪意を共有しているからこそ、短く的確に相手を傷つけることができる。小学生の頃は、年上の兄姉がいる子が持ち込んだ新しい悪口の語彙が、感染力を持って広がることがよくあったが、逆に誰かがゼロから悪口を生み出す、というのはレアケースなのかもしれない。茄子が大嫌いな先輩が「風呂掃除に使った高野豆腐みたいじゃん」と言っていたのは、たぶん彼のオリジナル。センスのある悪口はちょっと真似したくなるからいけない。
作者/久永草太(ひさながそうた)
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1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。
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