かずかずの太宰治論に声したり わたしを追いかけ、追いこせる人よ
誕生日に遺体が発見されたという太宰治。いくら太宰でもそこまで計画していたのではあるまいが、さすが彼である。私もご多分にもれずと言うべきか、高校時代から太宰治を愛読してきた。そして、太宰作品も読むと同時に、太宰修論もたくさん読んできた。他の人が太宰をどう読んでいるかが知りたかったのである。太宰が好きか嫌いか、どこが魅力か、どこが嫌味か。どこまでが真実で、どこまでが演技か。彼自身の言葉を引こう。「私は真実のみを、血まなこで、追いかけました。私は、今真実に追いつきました。私は追い越しました。そうして、私はまだ走っています。真実は、私の背後を走っているようです。笑い話にもなりません」(『碧眼托鉢』)
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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