もやしたち君らを茹でて我は食うすまない豆のわかものたちよ
もやし一本一本を見てみる。頭がついていて、ひょろひょろとした体が伸びていて、それぞれがれっきとした一個体であり、この台所に至るまでの生長があったはずだと思わせる姿をしている。巨大な怪獣から見た人間もだいたいこんなかんじだろう。けれど、28円のぎゅうぎゅう詰めのひとパックに入っていると、その一個体ずつに思いを馳せることはない。遠景でたくさんいるように見えると、怪獣は深く考えずに人間たちを踏み潰してしまう。ガザ地区の死者数が4万人に届こうとしている。
作者/久永草太(ひさながそうた)
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1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。
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