今日を終え静かなる夜 真空のようなこころで歯をみがきおり
歯みがきは小さいころからかなり丁寧にしていて、夜は特に時間をかけてみがいている。何かを長い間継続するということが苦手で、あまりできた記憶がないけれど、歯みがきを丁寧にするということだけはずっとやってこられた。あわあわになるとそれで終わってしまうので歯みがき粉はつけすぎないというのが肝心で、歯の一本一本を意識しながらブラッシングする。鏡を見つつ、指先で歯のかたちを感じつつ真剣に歯をみがいているひとときは、面倒に感じつつも意外とリラックスできる時間になっているのかもしれない。
作者/福山ろか(ふくやまろか)
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2004年、浜松市生まれ。埼玉県在住。高校一年次、現代文の授業をきっかけに作歌を始める。「さえずりに気づく」で第六十八回角川短歌賞次席。「眼鏡のふち」で第六十九回角川短歌賞次席。「白昼」で第三十五回歌壇賞次席。慶應義塾大学在学中。東京大学Q短歌会所属。
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