更衣済みて冬毛はひと冬の思い出として浮游をやめず
換毛期も後半にさしかかり、動物病院は毛だらけである。床にふわふわ落ちている毛の塊というのは、ほうきで集めようとしても微風をめざとく感知してふわふわ逃げていってしまう。寒い冬をのりきるためのすぐれた断熱性をほこりつつ用無しとなってしまった毛の、第二の人生である。
作者/久永草太(ひさながそうた)

1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。
コメント