No.158/2024年6月6日【いくつ】 一本の胡瓜叩きて耐え切れず今宵生まれる宝石いくつ

久永草太

叩く、ということに興味がある。おっと大変な誤解が生じたようだ。サディズムではない、調理法である。鯵のタタキは包丁で細かく切っているが、「みじん切り」と言わず叩きとしたのはなぜだろう。鰹のタタキ、鶏のタタキはどちらかと言えば炙りである。こうしてけちをつけていくと、真実叩かれているのはたたききゅうりだけではないか。その暴力の痕跡たる断面に、塩とごま油が絡むと旨い。

作者/久永草太(ひさながそうた)

1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。

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