崩落の危機迫る夜の猪口一つ水切りカゴの岬に載せる
掃除機をかけようと思うと部屋を片付けねばならず、部屋を片付けようと思うとまずテーブルに置きっぱなしの湯呑みや小皿なんかを仕舞わねばならず、それらを洗おうと思うと山のようになっている水切りカゴに手をつけねばならない。水切りカゴが我が家の掃除の関所と言っていい。まあ、猪口一つならなんとか載らんこともないだろう、という性格だから、暮らしはいつも危険に満ちあふれている。
作者/久永草太(ひさながそうた)
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1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。
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