わだなかに日の照れる島 海のシマいや陸のシマいや天のシマ
島の語は通常の意味の他に、林泉の意味もあり、さらにやくざの縄張りとしてのシマもある。海中の島は、いずれのシマか。海、陸、天の三者の誰のものでもないか。私はじつは明後日から、瀬戸内海の岩城島に出かける。この島は若山牧水が大正二年五月に滞在した島である。歌集『みなかみ』の原稿はここで生まれた。ただ、牧水本人は執筆も浄書もできなかった。「詩魔」に襲われたのである。18日と19日の「牧水顕彰しまなみ大会」では、今治市でシンポジウムをおこない、船で岩城島に渡る予定だ。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)
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1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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