No.131/2024年5月10日【あば】 あばの服着し小学校の入学の写真 異(あや)しきほどに真面目に

伊藤一彦

前に転んで「あばら」骨に罅が入ったこととか、串間市の最初の借家がすごい「あばら」家だったことを歌おうかと思ったが、最終的には方言の「あば」の歌とした。草太さんは宮崎生まれだが、若いので知らないだろう。もちろん、俵さんやあつこさんも知らないだろう。私が小さいころは特にお年寄りが使っていた。「新しい」という意味で「大日本国語辞典」には出ている。「その洋服はあばか。えれ、いいが」などと使われた。「あらたしい」の「あら」が変化したものとか、「うぶ」がご語源とか、由来はいろいろいわれる。今日の歌は私があつらえの新しい洋服を来て写真屋で撮った写真である。昭和二十五年だから七十年以上前だ。かしこまって澄ました顔の少年がいる。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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