見上げればうらがわばかり水楢の樹が吸い上げる水になりたし
葉っぱの裏には気孔があって、木の根っこから吸い上げられた水たちは蒸気となってその孔から出ていく。そのあとはいつか雲になり、雨になり、山に注ぎ、また根っこである。水になってみたらどんなにか面白いだろうと思う。「旅人のからだもいつか海となり五月の雨が降るよ港に」(若山牧水)。牧水も水となって、この世界の表も裏も巡っているだろうか。
作者/久永草太(ひさながそうた)
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1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。
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