No.116/2024年4月25日【十年】 うぶすなの空のうらがはまだ知らず八十年もわれあふぎきて

伊藤一彦

あつこさんの「雪原」から「雪」の字をもらって、「雪(すす)」ぎたい過去があるという歌を作ろうとしたが挫折した。それで今度は「雪原」の「原」の字を使って私の住む「平原(ひらばる)」の地名を入れた歌と思ったがそれも挫折した。平原には矢的原(やまとばる)神社がある。高千穂峰からニニギノミコトが矢を放ったらこの土地に落ちたというのである。つまり、矢の的になったというわけだ。見えはしない高千穂の方の空を仰ぎつつ、まだまだ知らないことだらけの宮崎だと思う。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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