No.110/2024年4月19日【謝る】 「誤る」と「謝る」は同じ語源にて「アヤ」は「怪し」の意とは面白し

伊藤一彦

夫の或る出来事が妻を激怒させた。これまで家庭崩壊の危機はいくどもあったが、今回は最悪なことが起こりそうだった。怒りと絶望に陥った妻は、夫への最大の復讐として「自死」を考えはじめていた。両親とともに暮らす長女は母親の気持ちをやわらげようとするが、効果がなかった。一方、両親と別に暮らしている次女は父親から相談を受けてアドバイスした。「やっぱ女は宝石だよ!ダイヤの一つでもプレゼントして、頭丸めてあやまってみれば?」。ハルノ宵子さんの『隆明だもの』に出てくる挿話である。父、すなわち吉本隆明はそのアドバイスを本当にやってのけた。その結果どうなったかに興味がある人は、『隆明だもの』を読んでみてください。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

コメント

タイトルとURLをコピーしました