No.105/2024年4月14日【知】 朝刊を開けばどれもどれもどれも父の知りえぬニュースと思う

俵万智

2ヶ月前に父を見送った。直後の大きな悲しみとは別に、取り戻しつつある日常のなかで、ふと父の不在を感じて心が立ち止まる。大谷がホームランを打っても、藤井聡太が防衛しても、桜が満開になっても、死者には届かないニュースだ。そんな当たり前のことに、小さく傷つく。第三句の字余りは、非常に座りの悪いものだが「どれもどれも感」を出したくて、こうなりました。

作者/俵万智(たわらまち)

1962年、大阪生まれ。「心の花」会員。歌集に『サラダ記念日』『未来のサイズ』『アボガドの種』など。4月からNHK短歌、第二週の選者を務める。

コメント

  1. 清水洋二 より:

    従兄が2019/5就寝中に急逝したことを思い出します。コロナ禍を知らない旅立ちでした。

  2. サ・エ・ラ より:

    父、を母に言い換えると、まさに今の私の心境です。私もちょうど2ヶ月前に母を送りました。

  3. ぱぐ より:

    わたしが父を亡くしたのは夏でした。なかなか人にそれを言えませんでした。

    学校で働いているのですが、夏休み中だったこともあり、その時は職場の誰にも告げずに2学期の仕事にもどりました。

    本が好きだった父はわたしが学校図書館司書になったことをどの程度認識していたか、わかっていたら喜んでくれただろうにという思いは今もありますね。

  4. より:

    ホントにこの心情どおりです。
    私も3ヶ月前に父を急に喪いました。
    こうなる日はいつか来ると想像していましたが、父のいた実家に住まうと、常にまだ父の存在を感じていますが、もう父には届かないことばかりです。

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