3月31日、年度末の忙しさのなかでも「三世代のいちごつみ」は毎日更新中です。
別れの歌や花の歌など、春らしい歌が増えてきた3月でした。
それでは、それぞれの印象に残ったお互いの歌を、今月も振り返っていきましょう。
またこの記事の最後に、重大なお知らせがあります。ぜひ最後までお読みください!
3月の歌のアーカイブはこちら↓
それぞれの心に残った3月の短歌
伊藤一彦・選
No.87/2024年3月27日【甘】
ほどく紐ほどける紐の甘やかにするする桜始開 (乃上あつこ)
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韻律が美しく魅力的な歌だ。上の句は古典的な調べで、「ほどく紐ほどける紐」のリフレーンがいい。「ほどく」のは自分だが、「ほどける」のは誰かに想われている時にひとりでにほどけるというのが上代の理解である。「する」は「甘やかにする」と同時に紐が「するする」ほどけるの掛詞だろう。結びは「桜始開」で引きしめている。
No.64/2024年3月4日【弥生】
弥生土器のごとやさしい静かさで花を抱えて立っている人 (久永草太)
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送別会シーズンのいま、街の中で花束を抱えている人をよくみかける。「抱えている」が面白い。少し照れながら不器用に花を「抱えて」立っているのだ。そんな人物を「弥生土器」のようだとは作者の草太さんが優しい。「君、花が似合うよ。君にぴったりの花と思うよ」
乃上あつこ・選
No.71/2024年3月11日【花】
「花は咲く」と歌ひ歌はせて花咲けりや原発避難者に帰還住民に (伊藤一彦)
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一年を日付ごとに詠む難しさを考えさせられました。ここはさすが伊藤先生で、避難を余儀なくさせられた人々へ心を寄せ、この時の対応や反応がこれでよかったのかという問いも含まれています。この「いちごつみ」では、伊藤先生がシリアスだったりユーモラスだったり様々に歌を詠まれる自在ぶりもまた見どころだと思っています。
No.79/2024年3月19日【ひらがな】
ひらがなを書くのが苦手「ふ」が苦手どれも不服に顔そむけおり (久永草太)
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確かに「ふ」は書き方によって、笑っているようにも不服にも見えますね。草太さんが詠うと、文字もそれぞれの個性を持って生きているように感じます。高校生の時に草太さんが、牧水・短歌甲子園で発表した名歌「虐待の記事を読むたび『蹴』の字の隅のひしゃげた犬と目が合う」を思い出しました。
久永草太・選
No.68/2024年3月8日【別れ】
別れしも別れられしも人はみなどこにゐたれど銀河系の中 (伊藤一彦)
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僕はきっとこれからの死別や、そうでなくても人と別れるとき、この歌を思い出すのだろうと思います。質量保存の法則に則れば、火葬された体は水蒸気となり灰となり二酸化炭素となり地球の重力圏にとどまるし、人間がどんなに頑張っても、天の川銀河を抜け出すような別れはできない。そう思えば、案外さみしくないかもしれません。いい歌を頂きました。
No.75/2024年3月15日【ちくちく】
ちくちくと言葉の諸島を縫い合わせひと針ごとに浴びる陽光 (乃上あつこ)
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短歌を作るという作業の苦労をここまで的確に比喩した歌がこれまであったろうかと、胸に刺さった一首でした。「言葉の諸島を縫い合わせ」ていく作業。島だから縫い縮めようと糸を引いてもなかなか動いてくれないし、それが諸島というほどの数ある。大仕事です。でもそのひと針ひと針を照らしてくれる陽光があるから、歌を詠むのが止められないのでしょう。
4月のおしらせ
おしらせ① 歌を回す順番
4月1日から、歌をリレーする順番が逆回転になります。
3月:伊藤→乃上→久永
4月:伊藤←乃上←久永
おしらせ② 大叔母登場(特別ゲスト)
三人で歌をまわしてきた「いちごつみ一家」(祖父・伊藤/母・乃上/孫・久永)。
そんな一家を訪ねて、4月に親戚(特別ゲスト)が帰省してくるという連絡がありました☎。
ご紹介します、大叔母の俵万智さんです。
作者/俵万智(たわらまち)
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1962年、大阪生まれ。「心の花」会員。歌集に『サラダ記念日』『未来のサイズ』『アボガドの種』など。4月からNHK短歌、第二週の選者を務める。
俵さんはときどきやってきて、いちごを摘み、ふらっと帰っていきます。どのタイミングで来るのか、楽しみにお待ちください。
おしらせ③ 4月の写真
月毎に変わっていくサムネイル画像。4月はいちごジャムトーストになります。
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お見切り品のいちご(150円)で作りました。
4月のいちごつみもおたのしみください!
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