全幅の信頼せよと春のそら 絶望知らぬうすあを優し
春の空は、夏とも秋とも冬のそれともちがう。一言でいえば、麗(うらら)かだ。私が愛誦しているのは中村草田男の俳句。「我が背丈以上は空や初雲雀」。春空は遠くのようで近くて、雲雀とともに上っていけるのである。また「春空に身一つ容るるだけの塔」。一人の身体が入れるだけの小さな塔が心やすらかに大きな春空につつまれている。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)
1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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