いちごつみ2月の短歌のふりかえり

おしらせ

今日は2月29日。今年はうるう年でしたね。「短歌でつなぐ365日」というサブタイトルですが「366日じゃん!」と気づいて唖然としております。どうしましょう。
……さて、気を取り直して今月の29首を振り返りましょう。

2月の歌のアーカイブはこちら↓

それぞれの心に残った2月の短歌

伊藤一彦・選

No.41/2024年2月10日【耳】
耳たぶのように隠さず堂々とraison d’être(レゾンデートル)ここにいさせて (乃上あつこ)

伊藤一彦
伊藤一彦

『耳たぶ』を鮮やかに比喩として使った面白い歌で感心した。結句はかわいらしい。耳たぶには多数の細かい血流がながれているらしいが、この歌もすみずみまで「歌の血流」がながれている。

No.40/2024年2月9日【心音】
聴くことは耳の特権ではなくて心音にほら手を当ててみて (久永草太)

伊藤一彦
伊藤一彦

さすが獣医の草太さんの歌だ。四句の「ほら」、結句の「みて」に草太さんの優しい人柄がでている。ペットたちにも飼い主たちにもファンの多い若き獣医のひとこまである。

乃上あつこ・選

No.39/2024年2月8日【嬰兒】
ころされし嬰児あまたの心音をガザの御空の寒星伝ふ (伊藤一彦)

乃上あつこ
乃上あつこ

残酷にも殺されてしまった子どもたちの心音と、ガザの寒星の細かく揺れる光が呼応していて、とても印象に残りました。子どもたちにあったはずの将来を思い、心が痛みます。寒星を見上げて、祈るような気持ちが伝わります。

No.49/2024年2月18日【黄雲】
黄雲を飲み乾せばすみわたる空 夕日がビールに似てるのはなぜ (久永草太)

乃上あつこ
乃上あつこ

普段使わない語「黄雲」を使って「一語一会」を果たした草太さんのお見事な一首。第二、三句の句跨りでは、ビールを一気に飲み乾すような時間感覚までも伝わってきます。下の句の軽い歌いぶりもとてもいいです。

久永草太・選

No.36/2024年2月5日【鬼】
鬼よりも恐ろしきを身にかくまひて人は花見る明日なき花を (伊藤一彦)

久永草太
久永草太

人間が集団になったときのこわさ、自分が自分で思っていたよりも残酷な人間だと気づいた時の恐ろしさ。そんな負の側面を「持つ」「抱える」などではなく「かくまう」という動詞で表現したところが、言い得て妙です。

No.59/2024年2月28日【骨】
人骨と呼べば人類代表になった気がするわたしの骨も (乃上あつこ)

久永草太
久永草太

言われてみれば、たしかに「人骨」という言葉は「人の骨」という意味以上の風格がある気がして、面白い発見でした。死してなお向上心(欲?)を忘れないところが、「わたし」の性格を想像させてくれます。

3月のおしらせ

3月1日から、歌をリレーする順番が逆回転になります。
2月:伊藤←乃上←久永
3月:伊藤→乃上→久永

また3月のサムネイル画像は、伊藤先生の娘さまから差し入れで頂いた
『AUDREY (オードリー)』ハローベリー
というお菓子の写真に変わります。

とてもおいしかったです。ありがとうございました。

3月のいちごつみもお楽しみください!

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