わが子すらにくむことあるとうたひたる人に売犬愛める歌
昨日は斎藤茂吉の命日だった。混沌が魅力の歌人である。「あはれあはれ電(でん)のごとくにひらめきてわが子等すらをにくむことあり」(『白桃』)と詠んだ茂吉はずっと後に「目のまへの売犬(ばいけん)の小さきものどもよ生長ののちは賢くなれよ」(『つきかげ』)歌っでいる。自分が壮年期は仕事が忙しく、余裕を持ってわが子に接することができなかったのだろう。そして、年老いてわが子に語りかけるように子犬に「賢くなれよ」と。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)
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1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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