No.57/2024年2月26日【売】 わが子すらにくむことあるとうたひたる人に売犬愛(いとし)める歌

伊藤一彦

昨日は斎藤茂吉の命日だった。混沌が魅力の歌人である。「あはれあはれ電(でん)のごとくにひらめきてわが子等すらをにくむことあり」(『白桃』)と詠んだ茂吉はずっと後に「目のまへの売犬(ばいけん)の小さきものどもよ生長ののちは賢くなれよ」(『つきかげ』)歌っでいる。自分が壮年期は仕事が忙しく、余裕を持ってわが子に接することができなかったのだろう。そして、年老いてわが子に語りかけるように子犬に「賢くなれよ」と。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

コメント

タイトルとURLをコピーしました