No.56/2024年2月25日【焼】 焼売のグリンピースは消え去りて開くことなき緑の眼（まなこ）

焼売のグリンピースは消え去りて開くことなき緑の眼まなこ

口内炎は小さな点なのに、反乱軍のような勢いがある。小さな点で思い出すのは、焼売の緑の点だ。あのグリンピースはいつしか消えてしまった。昭和の時代は焼売の真ん中にちょこんと緑の点が鎮座していた。このグリンピースのように、主張もせず別れも告げずにそっと消えていった存在が他にもきっとあるだろう。

作者/乃上あつこ（のがみあつこ）

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。