No.54/2024年2月23日【半】 痛ましき思ひはてなし迢(はる)かなる能登半島の羽咋(はくひ)の御墓

伊藤一彦

今からもう三十年前に成だろうか。金沢市である研究大会があり、その大会を途中で抜け出して、気多神社近くの折口信夫親子のお墓をたずねた。松林のなかの砂地のような土の上にお墓はひっそり静まっていた。養子としていた一ノ宮出身の藤井春洋の戦死の報を聞き、信夫は父子の墓をこの地に建てたのである。この度の地震によってお墓がどうなっただろうかと案じられてならない。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

コメント

タイトルとURLをコピーしました