鬼よりも恐ろしきを身にかくまひて人は花見る明日なき花を
鬼を苦しめ滅ぼしたのは人間である。馬場あき子さんの歌に「春の鬼青きはさびし山峡の焚く火に対きてことばをかわす」(『雪鬼華麗』)がある。鬼は自分の心をわかってくれると思うから、馬場さんと言葉を交わし心を交わすのである。だが、「鬼よりも恐ろしき」ものをもつわれわれ人間の21世紀は自業自得によって滅びが待っているだろう。地球の警告の声はもう日々聞こえている。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)
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1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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