寒き夜に「襯衣」の「襯」の字書きてをり誰の身を温めむとするか
草太さんの歌から高野公彦さんの第一歌集『汽水の光』の「わがゆめのつづきのごとく朝光に吊されしシャツしづくしてをり」の作を思い出した。ともに若さを感じる歌だ。ところで、手もとの『明治・大正家庭史年表』(便利で面白い本で重宝している)によれば、明治3年「東京で手編みメリヤスのシャツ・ズボン下の下着が普及し始める」とある。そのころ西洋の洗濯技術も伝えられたとか。ただ、「襯衣」のユニークな用字がいつ誰によって始められたか、私は知らない。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)
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1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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