喉という砲台に舌ひとつ乗せひとり抱える濡れた弾薬
何か理不尽なことを言われる機会は、昨今かなり減った。会社ではハラスメント研修が盛んにおこなわれているし、世間の風潮も昔とは異なっている。それでも、何か言ってくる人はいる。すぐに言い返して、うまくかわせればいいのだけれど、私は驚いてしまって何も言えなくなる。その上、普段からケンカのない家庭で暮らしているので、ケンカも上手にできない。最後には「誰にも言わないように」と言われるが、言うかどうかは私の自由だ。
作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。
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