No.475/2025年4月19日【七】 七匹の、いや七頭の羊追ひとらへたる人そらにゆきたり

伊藤一彦

去る十一日に亡くなった奥田亡羊さんの思い出が去来する毎日だ。亡羊とは逃げた羊を追いかけたが道が多くて見失ったという意味の言葉である。、奥田さんは一匹どころか七匹をつかまえた。いや、大きな羊だったので七頭というべきだろう。職業や仕事をつぎつぎ変えて、どの仕事にも有能で彼らしさを発揮していた。「空には竜の匂いがした」と『花』の歌集巻頭では歌っていたが、彼には空の竜の血がながれていたのかもしれない。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

コメント

タイトルとURLをコピーしました