No.466/2025年4月10日【過ぎない】 うみやまの泡に過ぎない人間の深き愛憎かなしかりけり

伊藤一彦

若山牧水はことし生誕140年を迎える。いま牧水の作品を読み返している。すると「あめつち」や「うみやま」の語がくりかえし出てくる。明治時代になって「自然」という言葉がnaturreの訳語としてつくられたが、その前は「あめつち」「うみやま」「おのづから」などの言葉がつかわれていたようだ。大自然に比べると泡のようにはかなくちっぽけな人間の深く大きな悩み。悩みゆえに人間なのだろう。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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