No.445/2025年3月20日【茄子】 長身の佐土原茄子を手にとりて作り手の身を想ひたのしむ

伊藤一彦

佐土原ナスとは宮崎の伝統野菜である。一度は食卓から消えたその佐土原ナスがわずかに残っていた四粒の種子から復活した。昨年11月は宮崎市の市民劇団が「奇跡の野菜」のタイトルで舞台上演した。感動して観た。じつは長女の夫は「佐土原ナス研究会」の限定メンバーの一人である。形も色も不揃いのために市場から消えてしまったのだが、そのおいしさは格別でいまや全国の有名シェフがこの味に惹かれている。私の歌は長女の夫に聞いた話。作り手が太っちょだとナスも太っちょに、長身の作り手だとナスも長いものに、なるそうだ。販売されている佐土原ナスは生産者がだれかわかるように袋のリボンの色が違っている。長身の娘婿のリボンはちなみに金色だ。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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