終わりゆく愛を捧ぐよ天丼のあぶらじっくりふくめる茄子へ
いい牛肉は二切れでよく、カツ丼はすでにややきつくなりつつある。もうすぐ稼働時間が27年に達する、僕の胃の話である。とはいえ脂っこいものは未だに脳が欲していて、しかし脳のおもむくままに食べると胃が突然ストライキを起こす。二郎系ラーメンとやらに挑戦してみたい、などと言えば、胃がブチギレるのは時間の問題だろう。天ぷらの類は大好きなのだけれど、これも年限つきの愛かもしれず、ならば今のうちになるべく食べておきたい。そうやってまたもたれるのである。
作者/久永草太(ひさながそうた)

1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。
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