ひさかたの空のたまもののおしろいに山も樹も白し此処は老神
みなかみ町の「若山牧水みなかみ紀行短歌大会が終わった翌日の3月3日は、地元の人たちの案内で牧水ゆかりの地を訪れた。米川千嘉子さん。小島なおさん、乃上あつこさんとの嬉しい小旅行だったが、雪がすごかった。老神(おいがみ)では特に雪が激しく降っていた。私たちは用意してもらった長靴に履き替えて雪道を歩いた。牧水は大正十一年十月末に老神を訪れ、「かみつけのとねの郡の老神の時雨ふる朝をわかれゆくなり」の歌を残している。雪をかぶって美しいこの歌の歌碑も皆で仰いだ。白粉(おしろい)の語源は「お白い」らしいが、歌碑も樹々も山々も文字通り真白に化粧していた姿が目にやきついている。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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