No.407/2025年2月10日【おでん】 路地の奥の暖簾くぐれば「よんしゃい」で真夏もうまきおでんがありき

伊藤一彦

ニシタチといえば宮崎のいちばんの飲み屋街である。私も学生時代から通っているが、そのニシタチの最も古い店が「よんしゃい」だった。店の名前からわかるように福岡出身の女将が戦後間もなく開店したらしい。おいしいおでんが一年中あった。朝からの仕込みがたいへんだったはずである。報道関係、教育関係の客が多かった。おでんの語の由来も女将に「煮込み田楽」の略だと教えられた。私の好みは豆腐、厚揚げ、里芋、つみれなどで、はんぺんはあまり食べなかったように思う・その女将の死後は息子があとをつでいたが、今はもうない。それにしても小島家のおでんを一度味見してみたいものだ。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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