大寒波がきていますね。なによりパソコンのキーボードが冷たくて、編集がややつらいです。これ以上つめたくしないで……
ほんとうに大変遅くなってしまいましたが、昨年12月の歌のふりかえりです。
12月の歌のアーカイブはこちら↓
それぞれの心に残った12月の短歌
伊藤一彦・選
No.362/2024年12月27日【指先】
指先に棲む十柱の神々を束ねて祈る君のしあわせ(乃上あつこ)
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指先に「神々が棲む」という発想に感心した。本気で心から祈る人でなければ生まれない発想と思う。「束ねて」もなるほどと思った。作者にここまで祈ってもらえる人はまちがいなく「しあわせ」だ。
No.346/2024年12月11日【ピース】
結婚を不要とまでは言い切れず炒飯にグリーンピース鮮鮮(あざあざ)(久永草太)
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グリーンピースをながめながらチャーハンをひとり食べているうただ。甘みのある豆に塩味をきかせているはず。「結婚を必要とまでは言い切れず」ではなく「結婚を不要とまでは言い切れず」だ。二人での豊かな食卓を夢見ているのだろうか、私は新婚の若い夫婦と最近食事する機会があったが、夫も妻もそれぞれ忙しい仕事をもちつつしっかりと支え合っているさわやかさが心に残った。久永さんに「鮮鮮」見えたものは実はなにだったのか。
乃上あつこ・選
No.354/2024年12月19日【鹿】
夜深きにきいんきいんと鳴く鹿の声よかなしも雌雄とふいのち(伊藤一彦)
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鹿の鳴き声の「きいんきいん」がとてもいいですね。相手を求める哀しさが詠まれていて、命の本質のような気がしました。カ行音と母音イが多く用いられ、切なく響いています。
No.349/2024年12月14日【らせん】
それぞれの螺旋くずれてさようならカラスの勝手でしょう、おたがいに(久永草太)
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ユーモアとも皮肉ともとれるギリギリの軽みがいいですね。螺旋の崩れていくさまが、自由気ままな感じで開放感があります。人間の付き合いもこんな感じでいいのかもしれませんね。
久永草太・選
No.351/2024年12月16日【カレーの香】
カレーの香キリンの黄いろ草くしやくしや毛のけむけむに恋よ来い来い(伊藤一彦)
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あいうえおがわに はるがきた
かきくけこおりも もうとけて
(青戸かいち「おがわのはる」より冒頭部分)
小学校で音読した楽しい詩を思い出しました。恋に、政治に、戦意高揚に、短歌はいろいろと意味を持たされてきた詩形だけれど、はじめはきっとこんな言葉遊びの心で生まれたはず。それを忘れないようにしないと、短歌はどんどん心から離れたものになるように思います。
No.347/2024年12月12日【結婚】
椰子の木を見上げる首の無防備さ わたしは風と結婚をした(乃上あつこ)
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「わたしは風と結婚をした」さわやかな下の句に惹かれました。裸の幹にてっぺんだけ葉を生やしているヤシの木はたしかに無防備に見えますが、あれはあれで台風などの南方の強風をうまく受け流しているのかもしれません。対して、それを見上げる人間の首も、無防備というか、なんだか頼りなさげに見えますが、これはこれでさまざまな風を受け流してきた形なのでしょう。
1・2月のおしらせ
おしらせ① 2025年も続きます
当初、一年で終わる予定だった「三世代のいちごつみ」ですが、我らが祖父、伊藤先生が「もう一年やろうよ」とノリノリなため、もう一年やります。
(`・ω・´)今年もいそがしくなるぜ。
おしらせ② 祖母、登場(特別ゲスト)
2月から、いちごつみ一家の祖母(伊藤さんとご夫婦?!)として、なんと小島ゆかりさんにご登場頂いております。
作者/小島ゆかり(こじまゆかり)
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1956年、愛知県生まれ。「コスモス」代表。短歌甲子園(盛岡)特別審査員、高校生万葉短歌バトル(高岡)判者。若山牧水賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など。
「伊藤さんと架空の夫婦なんだかたのしい」とのことでした。
2月、3月の日曜日に歌をお寄せ頂く予定です。お楽しみに!
作者/吉川宏志(よしかわひろし)
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1969年宮崎県東郷町生まれ。京都市在住。「塔短歌会」主宰。第1歌集『青蝉』で第40回現代歌人協会賞を受賞。今年、第9歌集『雪の偶然』で第58回迢空賞受賞。最新歌集『叡電のほとり』を今夏刊行。
おしらせ③ 1・2月の写真
月毎に変わっていくサムネイル画像。
1月は冬越え中のイチゴの苗です。
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寒そうですね。ぶじ越冬できるかな……
2月は乃上さんが食べたというイチゴのサンドイッチです。
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いったい何がどうサンドされているのでしょうか……
今年も「三世代のいちごつみ」をどうぞよろしくお願いします!
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