穴なべて恐ろしと言ふ者あれど九竅(きうけう)をもつ人はそも穴
九竅(きゅうきょう)とは。人間の体にある九つの穴である。すなわち、両眼、両耳、両鼻孔、口、前陰、後陰の総称と辞書にでている。「百骸九竅」などと使われる。芭蕉の「笈の小文」の最初の一行の「百骸九竅の中に物有、かりにに名付けて風羅坊といふ」は有名だ。風羅坊とは風に破れやすい薄衣のような身をもつ自分ということである。「笈の小文」の冒頭の文はいつ読んでも励まされる。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)
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1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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