しみじみと沈むしじみの苦しみを押し黙らせて濁れり出汁は
祖父の作る味噌汁は美味しい。何を隠そう、超高級茅乃舎のお出汁を使っているのだ。玉ねぎも柔らかく溶け出して甘い。打って変わって自分で作る普段の味噌汁はいりこ出汁で、出汁をとった後のいりこも具として食べている。カルシウムである。昨日はしじみが半額になっていたので、珍しくしじみの味噌汁にした。生けるまま出汁をとるというのは思えば残酷な所業だ。何か義務のあるような気がして、しじみたちが鍋底に観念して開いていく様を最後まで見た。
作者/久永草太(ひさながそうた)
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1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。
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