遠く飛ぶ予定のカモメ傷ついてなみだぐみをり三階の窓に
昨日と一昨日は、大学入学共通テストだった。受験生は二日間、たいへんだったと思う。今日がまたたいへんである。おそらく多くの学校で登校して自己採点をすることになっているからだ。私も宮崎南高校で三年生の担任をしているとき、教室でこの自己採点に立ちあった。自己採点が進むにしたがって、思うように点数が取れていないことがはっきりしてきて、涙ぐむ生徒がでてくる。かと思うと、歓声をあげる者も出てくる。悲喜こもごもだ。辛いのは一生懸命に努力していたのに、期待していた点数が取れなかった生徒である。三階のベランダで泣いていた生徒の姿は今でも目にやきついている。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)
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1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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