No.371/2025年1月5日【凧】 少年われ作りて揚がらざりし凧 死んでゐるのに目をむいてゐた

伊藤一彦

今の正月は凧上げをしている子どもたちの姿を見ることはない。今年もそうだった。私が子どものころは模型店に行き竹ヒゴなどを買ってきて自分で凧を作り、そして空き地などで揚げていた。もっとも、不器用な私の凧はすぐ地に落ちるのが常だった、そんな私に凧の歌はほとんどないが、一首だけおぼえている歌がある。「過ぎにしを言ふな思ふな凧高くうち上がりゆく今が永遠」(『青の風土記』)。これは或る生徒を励ますために彼の名前を詠み込んで作った歌だ。後悔屋のスギタ君だったがそのあと見事に成長した。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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