夜の溝に噴く火のごとく眺めやる苺の一顆ケーキの上の
生クリームの上の苺は、ケーキに華やぎを与える。けれど、決して賑やかではない。赤い衣を纏って佇んでいるおとなしい人みたいだ。一人でケーキを食べる時には、苺と目が合うような感覚になる。どんなに角度を変えても、やはり目が合ってしまう。イブの夜は、自分の奥底にある感情が何かしら見え隠れする。
作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。
コメント