No.338/2024年12月3日【舞】 透明な水と空気を吸いこんで鏡のように舞う照紅葉(てりもみじ)

乃上あつこ

私は臨終の時には何も食べたくない。それどころか、数日前から有機物を体内に摂取することを止めたい。できるだけ身を軽くして、体内を空洞にして死にたい。けれど、牧水のようにお酒を吞んでおくのはいいかもしれない。保存状態が良くなるらしいから。あと、苺くらいは食べてもいいと思う。とりあえず、今生きているこの世は水と空気がとてもおいしい。

作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。

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