臨終に食べるんならば舞茸を天ぷらにして少しの塩で
先日、歌集『命の部首』の重版の連絡が来た。もう思い残すことはないので、最後の晩餐のメニューでも考えよう。うなぎもいい。からすみと良い酒をちょっと、というのもまたいい。いや筑前煮なんかで質素に締めくくるのもありかもしれない。あぶらっこいのがまだいけるなら、1番好きなのは舞茸の天ぷらだ。でも臨終前に揚げ物はきついだろうか。それなら梨が食べたい。ああ、みかんも食べたい。蜜の入ったりんごもいい。どうしよう、何を最後に食べたとしても、きっと食べなかった別のものを思い残して、こりゃあ死にきれない。
作者/久永草太(ひさながそうた)
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1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。
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