No.333/2024年11月28日【徳利】 徳利と言へばタートルネックとぞ 海亀はわれきらひならねど

伊藤一彦

福岡女学院の短歌コンクールは全国から多くのいい作品が寄せられる。この学校に勤める桜川冴子さんが企画した。大学も全面的に協力してくれるので有り難い。審査委員には俵万智さんもおり、表彰式ならびに講評にも福岡までわざわざ来てくれる。表彰式もあるので私はスーツにネクタイの恰好で毎年参加するのだが、昨年の12月の大会ではなんと宮崎にワイシャツを忘れてきてしまった。ホテルで朝にそのことに気づき、しまったと思ったがもう遅い。前夜に着ていた徳利セーターて行くしかなかった。福奥女学院の大会控え室で「すみません。ワイシャツを忘れて」と謝った。福億か女学院の理事長、学長の皆さんはもちろん正装である。失敗だったが、嬉しいこともあった。というのは俵さんが次のような歌を後で詠んでくれたからである。「とっくりのセーター姿こそよけれワイシャツ忘れし伊藤一彦」(「現代短歌」2024年3月号)。優しい俵さんである。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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