No.312/2024年11月7日【ただれ】 たましひがただれてゐたのか精神科にしげく通ひしかの冬のころは

伊藤一彦

五年前である。晩秋のころから不眠の夜が続き、心身の不調を強く感じるようになった。かかりつけの信頼するN医師に相談し薬も処方してもらったが、不眠も不調も改善しなかった。不眠を改善する本や鬱から抜け出す本などあれこれ読んでその対応策を実行してみたのだが効果がなかった。年が明けて、心配するN医師が総合病院の内科と精神科の紹介状を書いてくださった。久永さんが精神科の話を書いていたので、こんな体験を書いてみた。おかげで五か月ほどで本来の自分を取り戻すことができた。極度の疲労が心身を「ただれさせて」いたらしい。おかげで今は元気である。もしかしたら五年前よりも。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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