大銀杏ふらす言の葉きらめくを見つめゐるのみ読みあたはざる
わすれられない大銀杏の樹がいくつかあるが、そのうちのひとつは東京の新宿区原町の専念寺の大銀杏である。この専念寺は若山牧水が早稲田時代の最後に下宿したところである。数年前に訪ねたとき、入口の二本の大きな銀杏樹が印象的だった。百年は優にたっている大木で、であるなら牧水の恋人小枝子がその下をくぐるようにして牧水の部屋に通ったのを目撃しているはずである。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)
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1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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