No.297/2024年10月23日【剝がれ】 重吉の琴のなつかし 悪さしてゐてもゐなくても剥がれゆく秋

伊藤一彦

八木重吉の詩を愛読していたことがある。たまたま重吉ファンの友だちがいて、よく彼の詩について語りあった。重吉のように純粋な友だちだった。その重吉の代表的な詩に「素朴な琴」がある。「この明るさのなかへ/ひとつの素朴な琴をおけば/秋の美しさに耐へかね/琴はしづかに鳴りいだすだらう」。こんな琴もこんな秋も失ってしまったような気がする。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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