轟ける万の花火を映し終え琵琶湖は暗き水面に戻る
びわ湖大花火大会は、子どもが幼いころ、一度だけ行ったことがある。あまりに人が多すぎて、子どもがつぶされないか心配で、花火のことはほとんど憶えていない。
私が今住んでいる部屋から東山が見える。その向こうには琵琶湖がある。直線距離で十キロくらい。花火は見えないけれど、山の上の空は赤っぽく染まり、音もどろどろと響いてくる。一万発も打ち上げるそうである。
作者/吉川宏志(よしかわひろし)

1969年宮崎県東郷町生まれ。京都市在住。「塔短歌会」主宰。第1歌集『青蝉』で第40回現代歌人協会賞を受賞。今年、第9歌集『雪の偶然』で第58回迢空賞受賞。最新歌集『叡電のほとり』を今夏刊行。
コメント