根の国へ闇をくだりしスサノオは母に会いしか火を生みし母に
伊藤一彦さんの歌の「根国」とは、『古事記』に出てくる「根の堅洲(かたす)国」と同じものなのだろうか。
スサノオが「僕(あ)は妣(はは)の国 根の堅洲国に罷(まか)らむとおもふがからに哭(な)く」と大泣きするので、父のイザナギは激怒する。その後、ヤマタノオロチ退治などいろいろあるのだが、スサノオはいつの間にか根の堅洲国に住んでいて、逃げて来たオオクニヌシを受け入れる。
じゃあ結局、母に会えたのか。だが『古事記』は何も語らない。
作者/吉川宏志(よしかわひろし)
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1969年宮崎県東郷町生まれ。京都市在住。「塔短歌会」主宰。第1歌集『青蝉』で第40回現代歌人協会賞を受賞。今年、第9歌集『雪の偶然』で第58回迢空賞受賞。最新歌集『叡電のほとり』を今夏刊行。
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